elemental life & society – 株式会社el&s

WORKS & VOICES

神奈川県川崎市に本社を構える伸和コントロールズ株式会社(以下、伸和コントロールズ)は、半導体やディスプレイの製造過程で使用される精密温調装置の開発・生産を行うメーカーです。

そんな最先端の技術を追求する伸和コントロールズが、「つながり」をコンセプトに社員食堂をリニューアルしたのは2018年春のこと。業務委託という大変光栄なオファーをel&sにしてくださいました。

少人数の社員食堂で「オーガニック」にこだわった理由、食堂開設までのプロセス、導入後の様子などを、
ご担当である「社員食堂委員会」の向山優樹さんにうかがいました。

最高のアウトプットのために
最高のインプットを

 2017年3月、伸和コントロールズは川崎市に本社を移転しました。本社に勤務する社員は30名ほどです。一般的にこの社員数で社員食堂を設けるのは難しいこと。なぜなら少人数ゆえに委託する業者がなかなか見つからないからです。けれども、幸島宏邦社長の社員を思う“心意気”が、常識を突破する原動力となりました。

「長野と長崎にある事業所には社員食堂がありますが、本社にはありませんでした。ですので、本社に勤務する社員のほとんどは、お弁当を購入していました。市販のお弁当は、どうしても揚げ物が多かったり、野菜不足になりがちですよね。そんな社員のランチ事情を見かねた幸島社長の『社員には日頃から身体にいいものを食べて健康でいてほしい』『最高のアウトプットのためには最高のインプットを』という思いが、社員食堂を導入するきっかけとなりました」

『世界一の社員食堂』の記事に
コレだ!と直感

 社員食堂プロジェクトを始めるにあたり、向山さんはまず社員の声を集めることにしました。
「手作りの心のこもった食事が食べたい」
「地元の野菜が食べたい」
「社員食堂をコミュニケーションの場として活用したい」
寄せられた多くの意見から社員一人ひとりの期待が感じられます。そんな思いに応えるべく、向山さんは徹底したリサーチを開始します。

「最初からオーガニックというキーワードがあったわけではないのです。少人数でも手作りの食事を提供してくれる会社をネットで探していました。けれど、なかなか思うような情報がヒットせず……。半ば諦めかけていたときに、スマートニュース株式会社の『世界一の社員食堂を目指して、SmartKitchenオープン』の記事にたどり着きました。しかも、『困難を極めた、30人規模からの社食導入』というコピーが踊っているではありませんか! 瞬時に、コレだ!と、直感しました」

オーガニックを追求した
コンセプトに深く共感

 それからの向山さんの動きに、迷いはありませんでした。

仕事の取引先があるアメリカのポートランドと日本を行き来し、オーガニックの食事情に詳しい社員の入江大樹さんとともに渋谷のdaylight kitchenを訪れ、オーガニックに特化したコンセプトを実感&共感。すぐに、社員食堂委員会のヘッドであり食に対する深い思いを持つ山本拓司本部長に報告し、代表の塚本との打ち合わせへと話を進めていきます。

「できるだけ無農薬の野菜を使い、保存料や化学調味料、冷凍素材に頼らず、手間を惜しまず、最高の食事を提供したい、という山本が社員食堂に望む要求は、el&sの塚本さんが実践しているコンセプトが完璧なまでに実現していました。さらに、少人数の社員食堂にも対応しているという実績もあるので、安心して業務を委託することができました。
蛇足ですが、我が社は文化活動にも力を入れていて、年に2回クラシックのコンサートを開催しています。会社内にグランドピアノがあるのですが、daylight kitchenの店内にもピアノがあって、聞けば塚本さんはミュージシャンでもあるとのこと。食だけでなく音楽という共通項があったこともうれしかったです。もし、社員食堂の案件が成立しなかったとしても、仲良くしていただきたいなと思いました(笑)」

つながりを大切にした
社員食堂『en-kitchen』が誕生

 いよいよ、オーガニックの社員食堂プロジェクトが始動することになり、伸和コントロールズ社内に『社員食堂委員会』が設置されます。

「業務委託をしたからお任せ、ではなく、社員の意見を集め、自分たちの食堂を自分たちで作りたいと思いました。まずは、社員食堂のコンセプトとネーミングから着手。委員会のメンバーが100個近くのアイデアを持ち寄り、検討を重ね、最終的にコンセプトは『つながり』、名前は『en-kitchen』に決まりました。食堂を、ただ単に昼食を食べる場所で終わらせるのではなく、社員、お客様、地域、家族、文化、自然など、あらゆるものごととの『つながり』を思い出したり、再確認する場所にしたいという思いを込めました」
 
ハード面でも社員の意見を積極的に取り入れています。たとえば、「落としたら割れる食器でご飯を食べたい」というリクエストに応え、事業所のある長崎が産地の波佐見焼きのご飯茶碗を採用したり、照明は心が落ち着く暖色系にするなど、細部に至るまでの配慮がなされているのが印象的です。

ビーガンメニューの
Meat Free Mondayが大好評

さらに話題となっているのが、毎月第一月曜日と第三月曜日に開催している『ミートフリーマンディ(Meat Free Monday)』。動物性の素材を使わないヴィーガンのメニューが登場します。オーガニックにこだわった社員食堂、というだけでもエッジが効いているというのに、さらに時代の最先端であるヴィーガンを取り入れるとは驚きです。

「元ビートルズのポール・マッカートニーさんが提唱する『ミートフリーマンディ(Meat Free Monday)』にインスパイアされたのがきっかけです。持続可能な社会のために、肉や卵、牛乳など動物性食品の消費のことを考えなければならないことを学びました。また、環境問題のことだけでなく、海外のお客様にベジタリアン(菜食主義)の方が多いことも導入理由の一つです。多様な食文化や習慣を自分たちの身近なところから理解することは、とても大切なことだと感じています」

お肉を食べないとスタミナが持たないのでは? 満足できないのでは? 野菜だけでは物足りないのでは? など、初めのうちは疑心暗鬼だった男性社員も、車麩のフライや季節野菜のパスタなどを平らげ、「おいしい!」「味もパンチがある!」「いい意味で裏切られた!」と、月に二回のヴィーガンメニューを楽しみにしているそうです。

日々、進化し続けながら
あらゆるポテンシャルを開花

 時計の針が12時15分を回ると、ひとり、またひとりと社員の皆さんが食堂に集まってきます。午前中の仕事を終えた安堵感も手伝ってか、本日のメニューを覗きこむ表情がふっと柔らかくなります。トレイを手にご飯をよそってテーブルの席につき、「いただきます」。ランチタイムが始まりました。そこには、街中のランチシーンにありがちな、騒々しさや忙しなさは微塵もなく、穏やかで楽しげでアットホームな雰囲気が流れています。

「食堂開設当初は、男性テーブル、女性テーブルというようになぜか別れて、ややぎこちない感じがありましたが、少しずつみんなが交流できるようになっていきました。今では、取引先のお客様を社員食堂にご招待することもあり、とても喜ばれています」

 伸和コントロールズのイノベーティブな取り組みは、始まったばかり。社員食堂委員会は、常に社員の声に耳を傾け、コンセプトである『つながり』を具現化し、仕事における“最高のアウトプット”を目指しています。

「食事の内容も食堂の雰囲気もとても気に入っていますが、満足して終わりではなく、日々、進化させていきたい。たとえば、ファミリデーを設けて農家さんと交流の場を設けたり、料理教室を開いたりして、en-kitchenを中心に家族や地域、社員同士のつながりを広めていきたいと思っています」

文中・写真に登場してくださっている伸和コントロールズ株式会社の方々

代表取締役社長 幸島 宏邦 氏 
アメリカ・ポートランドのフードカルチャーに詳しい 入江大樹さん
社員食堂委員会のメンバー
山本拓司さん、蟹澤正知さん、向山優樹さん、角田ゆりさん、坂本麻美さん、今西克弥さん

ご協力、有難うございました。

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